「見て盗め」の限界。ベテラン左官職人の“コテさばき”を映像化し、現場の品質を統一
導入企業
M重機工業株式会社
- 業種: 左官工事業
- 事業内容: 建築内外壁の左官工事、特殊塗装、デザインコンクリート
- 導入現場: 高級注文住宅 新築工事現場
導入背景
同社は、高い技術力を持つベテラン職人による意匠性の高い塗り壁を強みとしていた。しかし、その技術は個人の感覚と経験に大きく依存しており、若手への継承が思うように進んでいなかった。顧客からは複数の職人が携わる広い面積の壁で、「塗りムラ」や「模様の不統一」を指摘されることもあり、会社全体の品質をいかに標準化するかが経営課題となっていた。この課題解決のため、今回、特に高い技術が求められる現場で「モニまる」を試験導入するに至った。
抱えていた課題
この道30年のベテラン職長であるY様(49歳)は、左官の技術は長年の経験を通じて体で覚えるものだと考えており、デジタルツールとは無縁の現場を率いていました。
- 仕上げ品質の不統一 職人のクセや感覚で差が出て、壁全体の統一感が欠けていた。
- 抽象的な指示による手戻り 感覚的な指示の解釈違いで塗り直しが発生していた。
- 技術習得の遅れ 若手は遠目で学ぶしかなく、模様習得に時間を要していた。
- 塗り板サンプルの限界 小さいサンプルでは全体が伝わらず、完成後に不満が生じていた。
モニまる導入による解決策
「Yさんの手の動き、動画で撮らせてください」。若手からの提案に、Y様は「左官の技は画面で伝わるほど単純じゃない」と懐疑的でした。しかし、品質のバラつきという課題を前に、職人技を“見える化”する試みとして「モニまる」の導入を決断しました。
- 「匠の技」の映像化 コテさばきの暗黙知を動画で共有し、伝えにくい技術を可視化した。
- 施工基準の明確化 お手本動画と完成写真を提示し、全員が同じ基準で作業するルールを徹底した。
- 環境に合わせた情報提供 気温や湿度に応じた配合や養生時間を通知し、品質を安定させた。
活用方法
- 「お手本動画」による朝礼 施工前に動画を見て作業ポイントを共有し、全員の目線を合わせた。
- デジタル塗り板サンプル 顧客に施工事例を大画面で示し、仕上がりの齟齬を防いだ。
- 若手向けの反復学習ツール 動画でイメージトレーニングし、若手が自主的に技術を習得できるようにした。
導入効果
- 塗り直し(手戻り)が50%減少 解釈のズレがなくなり品質が標準化され、クレームによる塗り直しが減少した。
- 若手の技術習得期間が短縮 正しい動きを映像で学べるようになり、一人前になるまでの期間が短縮された。
- 材料ロスの削減 環境に応じた最適配合を共有することで、無駄を減らしコスト削減に繋がった。
- 顧客満足度の向上 完成イメージを共有しやすくなり、顧客の納得感と信頼関係が向上した。
お客様の声
(職長 Y様 49歳)
左官の仕事は、俺たちの魂そのものです。だから、部下に動画で技術を伝えたいと言われた時は、正直カチンと来ました。俺の技を、そんな簡単なものだと思うなと。 でも、試しに自分の手元を撮った動画をモニまるで流してみたら、若いやつらがそれこそ画面に穴が開くんじゃないかってくらい真剣に見ているんです。次の日、その中の一人が塗った壁を見て驚きました。まだまだ粗削りですが、俺が伝えたかったコテのリズムみたいなものをつかんでいる。 その時気づきました。俺たちが見て盗めで何年もかかったことを彼らは映像という共通言語で、もっと速く正確に学べるんだと。これは技術を安売りすることじゃない。次の世代に確実に繋いでいくための、最高の道具だったんです。

今後の展開
今後は、これまで蓄積してきた様々な仕上げパターンの「お手本動画」をライブラリ化し、社内のデジタル技術教材として体系化していく計画です。これにより、新入社員教育の効率化はもちろん、お客様への提案時にも動画を見せることで、より具体的で魅力的なプレゼンテーションを実現していきたいと考えています。